担当する顧問先を外し、資産税の専担チームを確立
―――岩崎先先生から資産税に特化するよう指示された時、吉川課長はどのように思われましたか。
【吉川】
私の場合は、最初から資産税が専門だったので、他の職員に比べて抱えていた顧問先が少なかったと思います。ですから、所長から言われた瞬間は、あまり抵抗はありませんでした。それよりも、当初は数字が上がらないかもしれないという不安が大きく、プレッシャーはすごく感じました。今から考えると、あのプレッシャーがあったからこそ、必死に努力することができたし、自分自身の成長にもつながったのではないかと思います。
その後、自分が行ってきた業務をパートに指示・徹底させたわけですが、相続の申告業務は感覚的な部分も大きく、ミスを犯すことは絶対にできませんので、最初は不安もありました。しかし、パートの人が一生懸命に頑張ってくれたおかげで、個々のレベルも高まり、今では安心して仕事を任せていられる状態です。
会計事務所のリスク対策がクローズアップされる昨今ですが、業務のクオリティーについてもあまり心配していません。社員とパートの連携もスムーズに行われています。現場では、「この仕事は自分が担当し、この仕事はパートが担当する」という感覚ではなく、自分の分身が行っているような感覚を覚えるほどです。また、税務署で資産税を担当していた職員もメンバーとなりましたので、その職員が最終チェックを行っています。このように、事務所体制をしっかり整えていますので、顧客からは高い信頼を得ています。最近では、別の会計事務所と顧問契約を結んでいるものの、相続案件については、私どもに依頼してくるケースも増えてきました。
―――税理士の専門家責任が厳しく問われるなか、やはり、資産税を苦手とする税理士にとっては相続案件を処理するのは難しいのでしょうね。
【岩崎】
そうですね。通常の会計事務所が相続案件に関与する件数は、年間数件ぐらいだと思います。現在は、相続財産の評価も非常に難しくなってきていますので、ほとんど相続に携わらない税理士にとっては、難しい部分も多いのは確かです。私どもは、年間50件の相続案件を処理していますので、経験豊富なスタッフが、提携先の土地家屋調査士や不動産鑑定士らと現地調査を行うなど、顧客に対して最善をつくしています。こうした多くの事例を持つことで、最善の方策を見出せるわけです。
また、相続は申告書を提出して終わりというわけではありません。私どもは、関連会社である「相続手続支援センター」が、各種名義変更手続きから未支給年金の請求、高額医療費の還付請求など、相続に関するすべての手続きの代行サービスを行っています。相続の諸手続きは、相続税の申告の有無にかかわらず70種類以上もあります。このような手続きに関する相談機関は極めて少ないため、顧客からも大変喜ばれています。最近では、金融機関からの信頼も高まっており、仕事を紹介されるケースも増えてきました。
―――今後、岩崎事務所としては、どのような形で収益を伸ばしていこうとお考えでしょうか。
【岩崎】
金融機関も頭を悩ませている企業再生について取り組んでいこうと考えています。現在、多くの中小企業が経営不振に頭を悩ませており、専門家のサポートを必要としています。こうした経営者のニーズに対し、積極的に関与していきたいですね。だからといって、職員の片手間でサービスを提供できるとは考えていません。資産税と同様、職員が企業再生の知識を蓄えて、プロとして専門的に携わっていく必要があります。そこで、資産税で専担チームを確立させているように、企業再生に関しても事務所内に専担チームのようなプロ集団を整えようと考えています。もちろん、事務所の最大の売りは資産税ですので、資産税のコンサルティングも継続して行い、資産家に対していろいろなサービスを提供していきたいです。
【吉川】
いわゆる“相続ビジネス”においても、これから広げられる部分がたくさんあると思います。たとえば、今後、相続税の基礎控除の引下げが行われれば、相続税の申告が必要となる資産家は一気に増えてきます。さらに、これからの高齢化社会を考えれば、相続税の申告が10万件を超える時代もやってくるでしょう。私どもの事務所ではこれまで税金対策を掲げて資産家にアプローチしてきましたが、こうした状況を踏まえ、これからは基礎控除以下の人にも相続の問題意識を持ってもらうことが重要だと考えています。また、私どもがアドバイスできるような仕組み作りとして、遺言信託や成年後見など、税金以外のサービスも必要となってくるでしょう。高齢者の方々にどのようなサービスが提供できるか、今後の事務所の課題といえますね。その際、資産税という縦の枠だけで考えるのではなく、社会福祉や医療分野などと横の連携を強め、ワンストップ的なサービスを提供することができれば、ビジネスチャンスはさらに広がるでしょう。
―――資産家のなかには相続問題に頭を悩ませる人も多いだけに、安心して依頼できる事務所が存在するのは心強いですね。岩崎事務所の今後の活躍を期待します。
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