公正証書遺言の方式は民法969条に書かれています。その内容を簡単に説明すると、
(1)証人が2人以上立ち会うこと
(2)遺言をする人が、その内容を公証人に口で説明する
(3)公証人がそれを書いて、遺言する人と証人に読み聞かせる
(4)遺言する人と証人が間違いないことを確認して名前を書いて印鑑を押す
(5)公証人が名前を書いて印鑑を押す
ここで、「証人」って誰のこと?とよく聞かれますが、決してお金を借りるときの保証人ではありません。単に、その遺言の内容が間違いないことを証明できる人という意味です。ただし、この証人にはなれる人となれない人がいます。次のような人は証人にはなれませんので注意してください。
証人になれない人
(1)未成年者
(2)推定相続人及びその配偶者、受遺者及びその配偶者、並びに直系血族
具体的に書きますと、遺言を書く人の、妻、夫、子供、そして子供の妻、子供の夫、遺言で何かをもらう人、もらう人の妻・夫、そして、両親や孫です。
(3)公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、雇人
いわゆる公証人の関係者です。
以上のような人は、証人にはなれません。もっと極端に書くと、遺言する人の関係者、身内は証人にはなりにくいということです。では、どのような人が証人になれるのでしょう。私どもがお手伝いするときには、たいてい相談員と、弁護士や司法書士・税理士などが証人になります
身内ではないから簡単になることができます。それ以外でも、信頼できて何でも話せるお友達などでも可能です。それでは、公正証書遺言のメリット・デメリットを確認します。
(1)公証人が作成し、公証役場で保管されるため安全。
(2)偽造・変造の心配がない。
(3)紛失しても、公証役場で謄本を取得できる。
(4)書き方や、字の間違いが無い。
(5)検認がいらない。
以上が大きなメリットです。
その中でも一番大きなメリットは5番の検認がいらないということです。遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。検認の申立てから手続き終了まで、およそ1ヵ月程度かかります。これは非常に大きなことです。公正証書遺言の場合、これがいらないのです。時間的にも、心理的にも非常に大きなメリットだと思います。
(1)費用がかかる。
(2)公証役場へ行く手間がある。
(3)一般の方が証人になった場合、遺言の内容が他に漏れる危険がある。
・・・というぐらいです。
手続の仕方を、簡単にご紹介します。まず、おおまかな流れから。
(1)誰に、何をどれだけ渡すのか、確認します。
一番肝心なところですが、これは御自分の考えが大切です。どうしたいのかよくお考えください。
(2)証人を2人決めます。
身内の方はなかなかなりにくいのでご注意ください。
(3)必要書類を準備します。
・ 遺言をする人の実印と印鑑証明書
・ 証人になる人の印鑑と印鑑証明書
・ 遺言をする人と相続をする人の関係の分かる戸籍謄本など
・ 不動産があれば登記簿謄本、預金があれば通帳のコピーなど上記は代表的な例ですが、内容によって必要な書類は変わりますので、公証役場や専門家などにお尋ねしたほうが確実です。
(4)公証人と事前に打ち合わせをします。
(5)公証人が案を作成します。
(6)証人と一緒に公証役場に行き、遺言書を作成します。
(4)(5)(6)では、法律上の問題点や書き方など公証人との打ち合わせを行い、実際に遺言書を作成します。文字で書くと難しくなってしまいますが、実際の手続はそんなに難しくありません。ようするに、誰にどれだけ相続させたいのかが決まれば、あとは事務的な手続だけです。
それでは、実際のよくあるご質問を、もう少しご紹介します。
Q.体が不自由で、公証役場にいけないと、公正証書遺言は出来ないのでしょうか?
A.できます。公証人に事情を説明すれば、自宅などに来てくれます。
Q.口がきけなかったり耳が聞こえなかったりする人は、出来ないのでしょうか?
A.できます。耳が不自由な方でも、読み聞かせる代わりに見てもらうことにより出来ます。(民法969条の2)
※口がきけない人は、以前は出来ませんでしたが、平成11年の民法改正により、できるようになりました。
Q.公正証書遺言の作り方を教えてください。
A.公正証書遺言は遺言者が公証人に依頼して作成する遺言で、遺言者が公証役場に出向いて作成する公文書です。
公正証書遺言作成の流れについては下記からご確認頂けます。
すこし、まとめすぎたような気もしますが、大体の感覚はつかめてもらえたでしょうか?